外国債券の最適為替ヘッジ比率

 2022年9月22日に外国債券の為替ヘッジ比率を調べて以来,久々にMy債券PFの為替ヘッジ比率を調べてみた.今回は風邪をひいて家から出られなかったので,最適ヘッジ比率について考えてみた.

表1:為替ヘッジ有り外債のPF占有率

ヘッジ有り債券は3年半で少ししか増えていない.あまり積極的に買い増していないというのもあるが,単純に債券価格が下がったのもある.外債PF中の為替ヘッジ比率は29%から21%に減少した.この比率が適切なのかを検証してみることにした.


図1:FTSE世界国債インデックストータルリターン
図1はFTSE世界国債配当込み指数の為替ヘッジ有りと無しの推移(2017年8月29日から2024年12月21日まで)である.実際のデータは同指数に連動する分配金を出さない為替ヘッジなし投信と為替ヘッジ有り投信の基準価額である.当たり前だが,ヘッジ有りは米国の利上げ以来ひどいパフォーマンスである.ヘッジ有り外債は国内債券の利回りに落ち着くのでほぼゼロ金利だった期間で少し運が悪ければマイナスリターンになるのは致し方ないところもあるが,今後アメリカの利下げ,日本の利上げ局面ではこのままマイナスを掘り続けることはないと思いたい.

表2:リターンの基本統計量

ヘッジ無しとヘッジ有り外債の期間を通しての相関係数は0.196とそれなりの正の相関である.しかし,図1でみられるように,米国金利高・円安局面では負の相関がありそうであるので,DCC-EGARCH-Skewed t distributionモデルを使って,相関係数の推移をみたのが図2である.

図2:条件付き相関係数の推移
しかし,図2をみるかぎりは負の相関になるのは一時的であり,どちらかというと米国の利下げ・円高局面であり,外国資産の評価額が下がるときに為替ヘッジ有り外債がPF全体の下落を和らげる役割はあるといえる.この点がいつか来るであろう米国株の暴落・米国債利下げ・円高局面に備えるという意味でヘッジ有り債券が外せない理由である.
 それではどの程度の外債をヘッジ有りにしておくべきかが問題になる.ヘッジをかけすぎれば通常時のパフォーマンスに問題が出る.ヘッジがなければPFの主力である外国株の下落をもろに食らう.ここでは債券PFのシャープレシオを最大にするようなヘッジ比率(ここでは,ヘッジ無しとヘッジ有り債券の比率)を計算してみた.ボラティリティと相関係数に関してはある程度過去のデータから推定したものを信用するとして,他方,期待リターンは過去のデータから推し量るのは困難である.よって,ヘッジ無しとヘッジ有り外債のリターンの組み合わせによって,最適ヘッジ比率がどのように変化するかを示したのが表3である.図3の赤い領域は為替ヘッジ比率がマイナス,つまり,ヘッジ有りの期待収益率が低すぎて持たない方がまし(空売り推奨)となる領域である.当然過去データの平均リターンを使うとこの領域に入る.グリーンの領域は為替ヘッジ比率が50%を超える領域であり,ヘッジ有り外債の利回り(≒国内債券の利回り)が高くて,ヘッジ無し外債の利回りが現状維持あるいは低下する場合である.繰り返しになるが米国利下げ日本利上げ円高ドル安局面なら十分考えられる.

表3:シャープレシオを最大にする為替ヘッジ比率


以上のことをふまえると現在の外国債券のヘッジ比率21%は決して高いわけではなく買い増しの余地はある.直近で政策会合で米国はタカ派,日本はハト派ととられるステイトメントだったので,ヘッジ有り債券は下落しているので,ゆっくりだが買い増している.がドルで受け取った配当でヘッジ無し債券も買い増しているので,為替ヘッジ比率が思うように上げられるかは不明である.

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