クラウド&サイバーセキュリティETFのリスク

先週遅まきながら,クラウド関連ETFを購入したわけですが,どの程度のリスクがあるのか基本的なことを確認していこうと思います.ここでリスクとはボラティリティのことで,ただ単に変動の激しさのことです.一部金融リテラシーのない素人投資家の中には「変動の激しさ」を「儲けのチャンス」とらえてリスクと認識できない人々が多数いるのは承知の上ですが,これを懇切丁寧に説明するには,このブログの余白は狭すぎるなどとフェルマー逃げでごまかしたいと思います.

クラウド関連ETFのことを調べているうちに,サイバーセキュリティ関連ETFも気になり始めました.ユーザー視点の素朴な疑問としてクラウド上にあるデータは大丈夫なのかという点と,米中の対立はガチの戦争も心配ですが,サイバー戦争はすでに始まっているといわれている点で,サイバーセキュリティ関連の企業に投資するのもありなんじゃないかと考えています.クラウドでもそうですが,サイバーセキュリティの個別企業の良し悪しは全然わからないので投資するとしたらETFになります.

CLOU(クラウド関連ETF),HACK(サイバーセキュリティ関連ETF)のチャートをみてみます.CLOUは新しいETFで2019年4月16日からのデータしかありませんのでこれで全期間です.ベンチマークとしてVOO(SP500連動ETF)もプロットしています.CLOUはコロナ前の高値をはるかに更新,HACKもVOOよりは回復しています.もともと将来性の期待される分野である上に,コロナ禍の下でもむしろ業績を伸ばせる分野でもあるので,株価の伸びは全く直観に反しません.しかしこれだけリターンが大きいとどうせボラティリティが高いんでしょと思うのが人情,いや自然の摂理です.

そこでCLOU,HACK,VOOのリターン,ボラティリティ,ベータを調べてみました.先ほども書きましたが,CLOUのデータ期間2019年4月16日からですので先週金曜までで計298営業日,一年ちょいの日次データによる計算になります.この表ではわかりやすくするため年率に直しています.

この1年ちょいの期間のリターンは,CLOUが28%,HACKが9%,VOOが7%となりました.これをみて,クラウドの時代キター!CLOU全力買いで3年で資産倍増!となるのは経済学では存在を許されない,金融工学では理論価格を計算するためだけにこき使われるリスクニュートラル人間ということになります.

普通の人なら,「どうせ(ボラが)お高いんでしょ」という疑問を持つはずです.ところがどっこい,ボラティリティは30%前後で3つのETFで大差ありません.リスクニュートラル人間大勝利!でしょうか?ついでにベータについても触れておくと,ベータは市場全体の動きに対しての感応度とよばれ,高いほうがハイリスクハイリターンで,市場の僅かな上昇に対してもその何倍ものリターンを得られるということになります.ベータの値からしてもCLOUやHACKはそんなにリスクの高いものではないということになります.

このような結果はコロナショックという特殊な期間,もっといえば容易に想像できるようにCLOUやHACKが有利な期間を多分に含んでいるからだと考えられます.実際,最初のチャートをみると,コロナ前の紫のVOOはなだらかな変化にみえます.コロナ前を2020年1月末までとして計算し直すと,CLOUとVOOのリターンはほぼ同等(16%vs15%)で,ボラティリティは22%と12%で,これをみるとCLOUはリスクの割にはリターンはないとも言えます.HACKにいたってはリターンも低い(5%)上に,ボラもまあまあ大きい(16%)で,どうしようもない感じになってしまいます.

しかし,コロナ後は一転,CLOU大勝利,HACKもVOOと同程度のボラティリティでVOOよりは有意に高いリターンを得ています.もし,これからはコロナの状況によって経済活動が制限されたり,制限されることを常に警戒しなければならない状況が続くとしたら,しばらくはCLOUやHACKがミドルリスクハイリターンの悪くない投資先となると思います.これらのETFがすでに上がりすぎた割高なものかということはPERみたいな従来の指標でははかれないので,全力投資というわけにはいきませんが,僕は少し買ってみたい気はします.というかCLOUは少し買ったのですが.

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